今週、ある男子高校生が、調理のボランティアに来た。ホッとスペース中原では、様々なボランティアや実習生、学生を受け入れている。

さかのぼること6年前…

夏休みのある日、お母さんに背中を押され、ボランティアに来た小学5年生のよしきくんは、おやつ作りの活動に参加した。

おやつ作りに乗り気じゃなかったTさん(90歳男性)に、スタッフが「今日はよしきくんも一緒に参加するので、手を貸してくれませんか?」と声をかけると、それならばと彼の為に、エプロンを付け、わらび餅作りに参加してくださった。
火にかけ、混ぜたりするよしきくんを「君は力があるなぁ!上手だなぁ!!」とTさんは笑顔で沢山褒めてくれた。

出来上がりのわらび餅を小皿に一緒に盛り付け、利用者さん一人一人に配ると、口々に「美味しかった、ありがとう!」との言葉をもらい、中には、麻痺があり食べにくそうな方も、一生懸命召し上がる姿によしきくんは感動した。そして彼は、作る喜び、ありがとうと感謝される喜び、僕の作ったおやつで、誰かを幸せな気持ちにする事が出来る事を、この体験で初めて知り、料理人になる道を志した。

やがてよしきくんが、進学で大事な人生の選択をするとき、かつてTさんが、手つきのぎこちない彼を見守って、沢山褒めてくれた事が思い出され、彼は迷いなく、進路を選択をした。

あの夏休みのある日から6年後、

見違えるほど背丈が大きくなり、すっかり年頃の高校生になったよしきくんは、調理場に立ち、見事な包丁さばきを見せ、沢山の利用者を笑顔にした。

Tさんは、3年前に亡くなったが、今も彼の心の中に生き、彼の成長を見守っている。

ホッとスペース中原での出会い、世代を超えた交流が、出会った次の人に継承され実を結んでいく。桜も咲き始め、新たな春はすぐそこだ。