人は自分の力では解決できない「生老病死」に出会い、人生の危機に陥ります。そのときに身体の苦しみ、心(精神)の苦しみ、社会的な苦しみに加えて、「どうしてこんな人生になるのか」「どうしてこんな苦しみが与えられるのか」「死んだ方がましだ」などと自分の存在や生きる意味を模索します。その時に感じる苦しみや痛みを「スピリチュアル・ペイン(苦しみ)」といいます。この苦しみから誰もが早く脱して元の生活に戻ることを願います。しかしこの苦しみは無意味なものではありません。人生の危機に出会い、存在の揺れや恐れを抱くことで、自分の生きる意味や存在の価値を問い直す「生涯学習の機会」ともなるのです。しかし、この機会は一人では見出すことはできません。自分のことのように感じて共感的に理解してくれる他者がいて、「大切な存在」への絆に気づき、その存在への「貢献」や「役割」などの生きる意味が分かります。そしてそれが自身の死を超えて残るものであることが分かるときに、希望や新しい生きる意味や価値を見つけ、自身や状況を受け入れ、自分の存在と人生を肯定的に受け入れることができるのです。これを「スピリチュアルケア」といます。
人は人生の危機に「危険とチャンス(機会)」の分水嶺に立ちます。私たちは、その時に人間としての学習の機会となるように「寄り添ってくれる者」(ケアラー)の存在、すなわち、重荷を共に背負い、共に耐え、共に考え、共に歩む存在として歩んでいく者となれるよう、ケアに取り組んでいきたいと考えています。
ホッとスペース中原はターミナル期(看取り期)に限らず、老いや認知症による生きにくさ、思いもよらない障がいや疾患の受傷による痛み、それらによって生じる人間関係や役割の喪失、貧困や社会的排除・差別、失業や引きこもりによる孤独など、福祉や介護、医療や看護、教育や社会問題に伴うスピリチュアルな苦しみに正面から向き合い、一人ひとりに寄り添うスピリチュアルケアを通じて、その人の生活・人生の質の向上を支援し、同時に私たちも人としての生き方、在り方を学ぶことで人間的成長を目指し、より良いケアを行っていきたいと考えています。